1997年10月12日
決勝

ビルヌーブ失格!?そんなの知らない!!

  八時半から始まる決勝前のウォームアップ走行に間にあわすため、目覚ましを早めにセットしたはずだったが、
 針を合わせてもスイッチを入れていなかったので、大幅に寝坊してしまう。
  しかも、わたしを起こしに来た連れが、オートロックを無視して扉を閉めてしまったため、鍵を閉じ込めてしまった。
  こんなトラブルの所為で、出足は遅れてしまう。
  だが、ローソンで朝食を調達することは怠らない。今日はおにぎりだ。
 
  一緒に買った中日スポーツに、またしても驚くべき記事が。
  
  「ビルヌーブ失格!?」
 
  なんでも、前日のフリー走行のヨス=フェルスタッペンの事故の際に、
 スピードを落とせ、という指示の黄旗を無視したことが原因だそうだ。
 しかもビルヌーブは、第13戦イタリアGPでも同様の違反を犯して出場停止処分を受け、
 このグランプリはその執行猶予期間にあたっていた(が、そのような違反がイタリアであったことは、
 ほとんど報道されていない)。
  このため、この日本グランプリの結果、ひいては最終戦への出場が抹消となることもありえるわけで、
 今日はビルヌーブにとっては厳しい戦いになる。

 
ウォームアップでトップでも
 
  われわれが座席についたとき、すでにウォームアップ走行は終了していた。
 そういうときに限って、われらがハッキネンはトップだったりするのだ。
  だが、所詮ウォームアップはウォームアップ。レースとは関係ないのだ。
 

 

  そして、現地でしか見られない、ドライバーズ・パレードが開催される。
  ミハエル=シューマッハは往年のフェラーリで、立ち上がって手を振る。
  ミカ=ハッキネンは名車コブラを自ら運転。
  ジャック=ビルヌーブはやる気なさげに座席によっかかったまま。

 それぞれの「意気込み」がはっきりと感じられて面白かった。

  このパレードが終わったところで、遅れてきたもうひとりと合流した。

  その後、F1決勝の前座として、シビックのワンメイクレースが開催された。
 事前の情報では、たいしたことのないレースということだったが、
 これがどうして、なかなかイケる。
 とくにファイナルラップでは、二位争いをする2台が、コースのほぼすべてにおいてサイドバイサイドという、
 壮絶なバトルを展開した。

  コースが清掃され、いよいよ緊張は高まっていく。
 グリッド上ではフラッグによるパフォーマンスとドライバー紹介が行われ、
 これが国際格式のイベントである、ということを実感させられる。
  
  そして正午。各車、ピットからコースへ出て行く。
 ゆっくりと一周した後、ダミーグリッドに収まり、最後の調整を行うのだ。
 
  今年は、ゲストとして、ポールのグリッドガールとして梅宮アンナが、
 そして表彰式のプレゼンテイターとして、羽田元首相が来ていた。が、
 客席からでは何も見えない。
 
 アナウンスで、予選結果が告げられていく。
 そして、
 時計の針は、一時を指した。

           パ・ドゥ・ドゥ
 跳ね馬の二人舞

 
 
   フォーメーションラップがスタートする。
 21台、すべて異常なく、一コーナーへ滑り込んでいった。
 天候は晴れ。路面温度は高い。ハイスピードバトルが期待できそうだ。
 シケインに、ゆっくりと姿を見せた隊列。最終コーナーを抜け、メインストレートへ。
  全ての準備は整った。

 シグナルが、ともる。そして、消えた。

 スタート!!!

  一コーナーに向けて、ビルヌーブがすごい動きを見せた。
 二番手のシューマッハ側に車を寄せ、進路をふさぎ、今度は反対側に行って、
 後続の侵入を防ぐ。

  その影響で、三番手スタートのエディ=アーバインは順位を一つ落とす。
 だが、そんな抵抗など、今日のフェラーリには無意味だった。

  2周目。S字から逆バンク、ダンロップへ。
 ……おや?アーバインがハッキネンを抜いて3番手に上がったようだ?
  
  ん??二位はシューマッハじゃない??

  リプレイが出る。
  
  S字で、なんとアーバインが前二台をパス!!二番手に浮上していた!!
  そしてそのまま次の周の130Rでビルヌーブの背後についたアーバインは、
  シケインの飛び込みで見事にビルヌーブをパス!トップに立った!!
  先頭に踊り出たアーバインは、その後、毎周ファステストラップを塗り替え、
 後続との差を広げていく。

  一方、ビルヌーブは作戦を変え、ペースを落とすことでシューマッハを道連れにしようとしたのだ。
 だが、その目論見は崩れ去る。

  16周目にアーバイン、18周目にシューマッハ、20周目にビルヌーブが一回目のストップ。
  これが終わった時点で、ビルヌーブはシューマッハの先行を許してしまう。ピットロード出口では、
 接触寸前の競り合いが見られた。

  そしてここからが勝負の肝。

  トップをひた走っていたアーバインは、突如ペースダウン。先ほど抜いていったS字で、
 シューマッハにトップを譲り、自分はビルヌーブを押さえ込む作戦に出た。
 ヘアピンの立ち上がりなどで、明らかにスロー走行をするアーバイン。
 この時点で、ビルヌーブの集中力は、そうとう落ちていたに違いない。
  その上、二回目のピットストップではタイムロスし、ハッキネンの先行をも許してしまう。

  ここで勝負は決まった。

  ラスト二周、トップのシューマッハに、フレンツェンが襲い掛かるが、時すでに遅し。
  シューマッハが、見事な勝利を収めた。だが、アーバインこそが、このレースの「主役」だった。

  期待の日本人勢は、共にリタイア。大舞台で結果を残すことはそう簡単ではない。

このレース、五位でゴールしたビルヌーブは、その後の審議で、このグランプリのすべての成績を抹消されることが決定した。
  が、このレポートでは臨場感を重視し、ゴールした順の結果を記しておく。

決勝結果
 
優勝 ミハエル=シューマッハー フェラーリF310/B 1時間29分48秒446
二位 ハインツ=ハラルト=フレンツェン ウィリアムズFW19 1時間29分49秒824
三位 エディ=アーバイン フェラーリF310/B 1時間30分14秒830
四位 ミカ=ハッキネン マクラーレンMP4/12 1時間30分15秒575
五位 ジャック=ビルヌーブ ウィリアムズFW19 1時間30分28秒222
六位 ジャン=アレジ ベネトンB197 1時間30分30秒076
 

真の戦いはこれからだ

 

  決勝レース終了後、ウイニングラン。
 フェラーリファンがフェンスに駆け寄り、旗を振る。
 完走したドライバーには、惜しげない拍手が送られた。

  そして勝利のシャンパンファィト!!

  だが、その余韻もつかの間、帰宅準備である。

 

  早くもメインゲート付近は大混雑となり、駅までの道のりは、

  何かの宗教行事のような混雑になった。

  辛くも駅に着き、四本電車を逃してやっと搭乗。

  その後名古屋で、

  「オムライス エビフライ付き」なるものを食べる。

  オムライスにはケチャップが、
  エビフライにはタルタルソースがかかっている。
  この二つが一緒にいる意味が理解できない。

  後は、もう新幹線自由席で直立。
  二時間で東京に着いた。

総括
 
  今回のグランプリでは、めったにない「チームプレイ」を見ることが出来た。
 これを「スポーツマンシップに反する」と見る向きもあるだろうが、それならば、
 なぜ、同じチームのドライバーは、同じスーツを着、同じマシンに乗るのか、と問いたい。

  帰ってきてから、自分がものすごい日焼けをしていることに気づいた。
 日焼け止めは必需品だと思う。
  あと、指定席とはいっても、硬いベンチのようなものに座るだけだ。クッションは必需品。

 とにかく、行ってきてよかった。
 7年レース見てきて、一度もサーキットに行ったことなかったのだから、
 本当に目から鱗が落ちる思いだった。

  一緒に行ってくれた二人には感謝。
  いろいろとアホな真似したことを、許してほしい。
 

 そして、この原稿が上がるのを気長に待ってくれたMCの方々と読者諸氏には、本当に言葉がないです。
 すいませんでした。
 

  次のヨーロッパグランプリは、決戦だ。
 マシンに全てを注ぎ込んだウィリアムズ・ビルヌーブと、
 「チーム」というものを見事に作り上げたフェラーリ・シューマッハ。
 機械と人間、どちらが勝つのか。
 今後のF1の行方を決める、大事な一戦である。
 ぜひ見て欲しい。


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