1997年10月11日
公式予選

右京引退!?そんなの知らない!!

   二日目の朝。6時におきて、近くのローソンで食料を調達。今日はパンだ。
 そこから歩いて地下鉄栄駅に。そこから五分ほど地下鉄に乗って名古屋駅へ。
 今日は臨時列車が出ている。名古屋から、鈴鹿サーキット稲生まで直通だ。
 だが、遅い。公称40分のところを一時間以上かかってついた。サーキットに入ったのは九時ちょうど。
  ローソンで買った「中日スポーツ」の一面に、驚くべき記事が。

  「片山右京、F1撤退!!」
 
  前日、記者会見があったそうなのだが、現地にいながら何も知らなかった。
 最古参の日本人ドライバーとしてがんばっていただけに惜しい気もするが、
 まあ、あのチームならモチベーションが低下しても仕方がないとも思う。
  その空いたシートには、中野信治が座るらしい。この世界では何がおこるか分からないものだし、
 このぐらい「何でも利用する」姿勢がないと生きていけないのだろう。

 おまえはすでに死んでいる

 

   今日は公式予選。直接レースに影響するものなので、昨日よりも人の入りは多い。
 フリー走行は、九時から四十五分ずつ、二セット。一回目と二回目の間は三十分しか開い
 ておらず、事実上、一回のセッションだ。
  一回目の走行で、ティレルのヨス=フェルスタッペンがスプーンの立ち上がりでストップしたために、赤旗が出る。
 そのために、これ以降の日程は十分ほどずれ込むことになった。
  トップはジョーダンのジャンカルロ=フィジケラ。途中まで、チームメイトのラルフ=シューマッハが、二位につけていた。
 だが、その座を奪ったのが、マクラーレン=メルセデスのミカ=ハッキネン。
 午後の予選では、二度目のポールポジションが期待される。

 立ちふさがる赤い壁

   そして予選スタート。開始直前に雨が落ちたが、路面をぬらすにはいたらなかった。が、この
 先雨が降る可能性もあるということで、各チーム、セッション開始と同時にコースイン。
  一度目のアタックを各車終えた時点で、トップはミカ=ハッキネン。以降、ジャック=ビルヌーブ・
 ミハエル=シューマッハと続く。
  その後、雨が完全に上がると、めまぐるしいアタックが繰り広げられる。
  フェラーリのエディ=アーバインが二位の座を奪うと、奪われたビルヌーブはトップへ。
  そして今回の主役、シューマッハも渾身の走りで二位と追いすがる。やはりこの二人が戦うシナリオなのか。
  そして最後のアタックへ向けて緊張が高まるところに、向いのダンロップコーナーで砂煙があがった!!
 ザウバー=ペトロナスのジャンニ=モルビデリがクラッシュ!マシンは後部が大破。
 モルビデリ本人はマシンから降りるも、頭を抱えてうずくまってしまう。
  予選は赤旗中断。
  すぐさまサーキット内の救急車が到着し、モルビデリをメディカルセンターへと運んだ。
  この事故の影響で、最後のアタックを予定していたドライバーは、一周を無駄にしてしまう。
 それに加え、赤旗が解除になった直後に、アロウズ=ヤマハのデーモン=ヒルがヘアピンでストップし、
 レコードラインをふさいでしまったために、タイム更新が各車ともできない。
  結局、順位は、モルビデリの事故直前のもので固定となった。

公式予選結果
P.P. ジャック=ビルヌーブ ウィリアムズFW19 1分36秒071
二位 ミハエル=シューマッハ フェラーリF310/B 1分36秒133
三位 エディ=アーバイン フェラーリF310/B 1分36秒466
四位 ミカ=ハッキネン マクラーレンMP4/12 1分36秒469
五位 ゲルハルト=ベルガー ベネトンB197 1分36秒561
六位 ハインツ=ハラルト=フレンツェン ウィリアムズFW19 1分36秒628
 
きしめんの逆襲

   予選終了後、土産物を物色する。関係する各スポンサーのノベルティグッズがほとんどだが、
 異彩を放っていたのは、地元・鈴鹿のお土産。「スズカクッキー」(そのまま)・「鈴鹿の風」(カスタードケーキ)・
 「ウイニング・ラン」(ケーキのたぐい)など、ベタベタの「おみやげ」が堂々と並んでいた。
 こういうのを見ると、「決戦の地・鈴鹿」などという格好いい文句もどこかへすっとんでいってしまう。
 と言いつつも、「スズカクッキー」を二箱買ってしまう。
   そして名古屋へ戻る。鈴鹿サーキット稲生駅は、前日にもましてひどい混雑になっている。
 ホームに人が入りきれず、また、列車が二両編成でしか来ない。しかも、東京都内的高密度圧縮状態にせず、
 中でかなりスペースが余った状態で発車してしまうのだ。三十分ほど並び、なんとか快速名古屋ゆきをつかまえる。
 座れた。
 そして名古屋についたわれわれは、ホテルに着く前に夕食を食べてしまうことにした。
 昨日のエビフライで失意の底に沈んだ教訓から、今度はきしめんに挑戦することにした。
 慎重に慎重を期して、わざわざコンビニでガイドブックをめくる。すると、ホテルの近くに一軒あるではないか。
 早速むかう。
  二人とも、天ぷらきしめん定食を注文。普通のきしめんに、天ぷらの盛り合わせがついたものだ。
  きしめんをすする二人。

 「……。」
 「きしめんだな。」
 「きしめんだ。」

  かつおが効いていたが、めんは、やっぱり「きしめん」だった。やっぱり、名古屋でなくても、
 という感覚は残った。むしろ、一緒に頼んだ串カツ味噌だれの方に、名古屋の風味を感じた。

  結論。

  「名物にうまいものなし」

  そのまま帰って寝た。

  だが、我々がきしめんを食っている間に、驚くべき裁定が下されていたのだった。
 

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